数年前まで原因がわからなかった。
どうもヒラメの刺身を食べると腹をこわすという事実。
2000年ごろから言われるようになった。
疫学的にヒラメに原因があるようだとはわかっていた。
しかし,原因がはっきりしない。
厚労省は原因追究に動き出す。
当初は、まことしやかにヒラメの毒,ヒラメトキシンなどとうそぶかれていた。
どこの世界にもマニアは存在し,原因が寄生虫であることが判明する。
粘液胞子虫という寄生虫だ。
この粘液胞子虫,環形動物(ゴカイなど)を経て,魚の筋肉内にシストという形で寄生する。
以前より数種類が確認されていた。
そのうちの一種類で,食品苦情で有名なところではジェリーミートと呼ばれる,
魚肉がグジュグジュになってしまう苦情の原因であることはずいぶん昔からわかっていた。
さて,ヒラメの刺身が原因の消化器症状。
調査研究を進めると,
粘液胞子虫のクドア・セプテンプンクタータという新種が見つかり,
こいつが原因であることが判明する。
特に韓国産の養殖ヒラメ,さらに済州島近辺で養殖されたヒラメに多く寄生しているという。
ようは高濃度汚染海域だ。ヒラメ自体には病害性は確認できていない。
ただ,人体に及ぼす作用機序は確認できておらず,
おそらく「クドアがだす,酵素系の消化液が原因ではなかろうか」と言われている。
まあ,主に養殖ヒラメが原因となることが多いが,もちろん他の魚にも寄生している。
人に影響があるところではクロマグロ。大きくなればなるほど寄生率はあがる。
しかし,本マグロが原因になることはまずない。いかんせん虫であるために冷凍には弱い。
本マグロの流通形態は冷凍流通のため,寄生をしていても人の口に入るまでには
すっかり,おっちんでいる。
問題はメジだ。こいつは冷凍流通ではないので,比較的原因食品になっていたと思われる。
ところが,マグロの保護政策が始まり,メジマグロの流通が激減,
自然とメジでクドアが原因であろう食中毒は減少した。
韓国産養殖ヒラメが原因の可能性が高いという事実。
原因がはっきりすれば,対策もとれるわけで,韓国での出荷規制や,
ペナルティなどのルール化をし,一時期の事故数は上がらなくなった。
しかし,いかんせん,完璧にはいかないから,ぽつぽつ事故はおきる。
ヒラメ,冷凍流通はほぼないからね。
しかし,冷凍技術も格段に進歩しているので,クドアの中毒は,ほぼなくなるかもしれない。
もちろん,虫なので加熱には弱いので火を通せば大丈夫。
茨城でもぽつぽつ事故がおきているのです。
予後良好で食べて数時間で下痢をして吐いて,すぐに治る。ちょっとした食あたり。
アニサキス程苦しむことはない。
日本料理屋の親方なんかと話をすると,「身に丸い粒粒が入っているのでわかる」
なんてことをいう親方もいるけど,それは違う種類。
セプテンプンクタータのシストは目では見えない小ささ。
案外,刺身を扱う飲食店営業者もよくわかっていない人もいる。
ちなみに,国内産天然ヒラメが原因になることは非常にまれ。
まあ,クドアの食中毒自体がまれではあるが。
いずれにせよ,全ての食べ物には大なり小なり危害の可能性はあるということ。
茨城の県魚はヒラメだからね,変なレッテルは貼られたくないよね。
同じ時期に馬肉のザルコという寄生虫の調査もやったけど,それはまたそのうちに
記事にできれば。